糸の太さの単位について、前回の続きです。
番手、デニール、セカント(μm 1/1000mm) の関係がどのようになっているか考えます。
前回はこちら
まず、番手とデニールで比較します。
それぞれを比較しやすいように、基準となる重さを 1g にして考えてみます。
ざっと計算していくと
綿番手の場合
1ポンド(453.6g)、840ヤード(768.1m)で1番手なので
1g あたりで考えると 768.1/453.6 ≈ 1.693m で1番手となります。
麻番手の場合
1ポンド(453.6g)、300ヤード(274.3m)で1番手なので
1g あたりで考えると 274.3/453.6 ≈ 0.6047m で1番手となります。
毛番手の場合
1kg 、1km のときに1番手なので
1g あたりで考えると 1m で1番手となります。
デニールは
9000m 、 1g のときに1デニールです。
つまり、綿番手が1番手のとき
麻番手の 1.693/0.6047 ≈ 2.8 番手に相当し
毛番手の 1.693/1 ≈ 1.693 番手に相当し
デニールは
9000/1.693 ≈ 5314.9 となります。
綿番手が2番手だと
麻番手 2.8×2 ≈ 4.9 番手
毛番手 1.693×2 ≈ 3.386 番手
5314.9/2 ≈ 2657.5 デニール
になります。
同様に他の各番手とデニールの関係は
麻番手が1番手のとき
綿番手の 0.6047/1.693 ≈ 0.3571 番手に相当し
毛番手の 0.6947/1 ≈ 0.6047 番手に相当し
デニールは
9000/0.6047 ≈ 14882.9 となります。
毛番手が1番手のとき
綿番手の 1/1.693 ≈ 0.5905 番手に相当し
麻番手の 1/0.6047 ≈ 1.654 番手に相当し
デニールは
9000/1=9000 となります。
また、番手、デニールの関係は
1デニールのとき
綿番手の 5314.9 番手 ≈ 麻番手の 14882.9 番手 ≈ 毛番手の 9000 番手に相当し
2デニールだと、それぞれの番手の値を2で割った値になります。
まとめてみると以下のようになります。
例えば、a綿番手の糸は
a×1.693 麻番手に相当し
同様に a×2.8 毛番手、 5314.9/a デニール に相当することにもなります。
また、bデニールの糸は
5314.9/b 綿番手に相当し
同様に 14882.9/b 麻番手、9000/b 毛番手に相当します。
番手とデニールの関係がわかったので
次は スーパー~’s のセカントについて考えてみます。
セカント、番手、デニールを比較するためには単位が異なるので、同一の単位になるようにします。
セカントは、スーパー100’s のとき 18.5μm というように、繊維の太さ μm であらわされます。
これと比較できるように、デニールと太さの関係について考えます。
デニールの定義は
9000m の長さのフィラメント糸が 1g のときに 1デニール となるものですが
いいかえると
9000m の長さのフィラメント糸が Xg のときに Xデニール となります。
繊維の太さは一定ではないため、その繊維の断面積の半径の平均を r と仮定します。
繊維の比重を ρ とします。以上の要素より計算をすると
このようにXデニールの糸の太さがわかります。
これで番手、デニール、セカント(μm)の関係を大体つかむことが出来ました。
色々と比較をしていきます。
(それぞれの繊維の比重は 綿 1.54 麻 1.50 毛 1.32 絹 1.33)
天然素材で一番細い繊維は絹の 1~3デニールくらいで 10.32~17.87μm となります。
通常、絹は繊維を何本か撚り合わせてつくり、だいたい 14デニールか 21デニールの糸にします。
14デニールの糸で 33.48μm、21デニールの糸で 47.29μm
細いといわれる絹の品種の小石丸で10デニール以下程度の糸ができて、32.63μmくらい。
人の髪の毛は大体50デニールくらいで 72.96μm
綿繊維はだいた 15~25μm
50番手の糸だと106デニールだから 98.73μm
100番手で53デニールで 69.81μm
200番手で27デニールで 49.83μm
最高で300番手くらいまでの糸を紡績すること出来て、17.72デニールで 40.37μm
化学繊維はもっと太いもの、細いものも出来ます。
太いものだと
防弾チョッキの素材の一部に使用されているといわれるバリスティックナイロンで
1680デニールだから456.82μm (ナイロンの比重 1.14)
テグスなどだと、数千μm(数mm) くらのものなどもありますし、それより太いものもつくることができます。
細いものだと
薄いタイツだと10デニールくらいだから、綿番手で530番手くらいで 35.24μm
あまり細くなりすぎると、織り機や編み機にかけることが出来なくなります。
(数デニールくらいまでなら機械にかけることが出来るみたいです)
そのため他の方法で面状につくられたりします。
例えば人工皮革などで
0.1~0.001デニールくらいで 3.5~0.35μm (アクリルの比重1.15)
ものなどが使われています。
様々な特殊素材として使われるナノファイバーとよばれるものは
その名前の通り、ナノメートル(nm=1/1000μm) 以下の太さです。
といように繊維、糸の関係を少し調べてまとめてみると
1000μm以上 太めのテグスなど
456.82μm バリスティックナイロン
374.84μm 10番手麻糸
310.73μm 10番手毛糸
221.07μm 10番手綿糸
200μm 細い注射針
167.63μm 50番手麻糸
138.96μm 50番手毛糸
118.53μm 100番手麻糸
98.73μm 50番手綿糸
98.26μm 100番手毛糸
96.78μm 150番手麻糸
80.23μm 150番手毛糸
80μm 太めのラミー(苧麻)繊維
72.96μm 人の髪の毛
69.81μm 100番手綿糸
69.48μm 200番手毛糸
57.08μm 150番手綿糸
49.83μm 200番手綿糸
47.29μm 絹糸(21デニール)
40.37μm 300番手綿糸
40μm 太めの毛繊維
35.24μm 薄手タイツ(10デニール)
33.48μm 細めの絹糸(14デニール)
32.63μm 絹糸(小石丸)
20μm 太めの綿、リネン(亜麻)繊維
25μm以下 ステンレス、銅などの紡績するときに用いる金属繊維
20μm かなり細いラミー(苧麻)繊維
18.5μm スーパー100’s
15μm かなり細い綿、リネン(亜麻)、毛繊維、カシミヤ繊維
13.5μm スーパー200’s 細めカシミヤ繊維
13μm ビクーニャ、パシュミナ繊維、極細の毛繊維
10.32~17.8μm 絹繊維(絹糸1本)
3.5~0.35μm 人工皮革に用いる繊維
1.0μm以下 ナノファイバー
太い繊維、細い繊維。
それぞれの特徴、用途に合わせて様々な太さの繊維、糸が使用されています。
このような感じで大雑把な計算でですが、今回は繊維の太さの関係について考えてみました。