5月 20, 2011 - 1 Comments - textiledesignnotes -

番手とスーパー

テキスタイルの重要な要素のひとつである糸。
その糸の太さをあらわす単位として、日本で一般的に使われているものに
番手とデニールがあります。

 
天然素材の繊維でつくられた糸は、その太さが、
全て一定にはならないために、
糸そのものの太さであらわすのではなく、
重さと長さをそれぞれ基準にして、糸の太さをあらわします。
 
番手は、
一定の決まった糸の重さに対して、どのくらいの長さがあるかにより決まります。
この単位は、紡績糸に用いられます。
綿、麻、毛のほか、絹や化学繊維でも短繊維を紡績したもの等です。
 
デニールは、
一定の決まった糸の長さに対して、どのくらいの重さがあるかにより決まります。
デニールはフィラメント糸(連続長繊維を束ねた糸)に用いられます。
絹のほか、化学繊維のフィラメント糸等です。
 
(短繊維はおおよそ~数十cmくらいの短い繊維。
連続長繊維は途切れのない長い繊維のことで、天然繊維では絹のみでだいたい、1~1.5km程度。
化学繊維は任意の長さにすることが出来るので、長繊維、短繊維の両方ともつくることが出来ます。
アクリルやポリノジックなどは短繊維として使用されることが多く、
天然繊維の絹もあえて短く切って短繊維にして使用したりもします。)
 
(国際単位系では番手、デニールに変わってテックスという単位が使用されているのですが、
いまでも番手、デニールが主流かな?)
 
 
番手にはいくつか種類があり、
綿番手、麻番手、毛番手(メートル番手)があります。
それぞれ、基準となる重量、長さが異なります。
 
綿番手は
‘1ポンド(453.6g)’ の長さの綿糸が “840ヤード(768.1m)” のときで1番手で、
‘1ポンド’ の長さが 840ヤード の2倍の “1680ヤード” で2番手となります。
標準となる糸の重量の ‘1ポンド’ に対して、
その糸の重さが基準の “840ヤード” の何倍か?ということで何番手になるかが決まります。
番手が大きくなればなるほど、その糸は細いということになります。
 
麻番手は
‘1ポンド’ の長さの麻糸が “300ヤード” のときに1番手となります。
‘1ポンド’ の長さが 300ヤード の2倍の “600ヤード” で2番手となります。
綿番手と同様に、番手が大きくなればなるほど、その糸は細いということになります。
 
毛番手は
‘1kg ’ の長さの毛糸が “1km” のときに1番手となります。
綿、麻番手と同様に、番手が大きくなればなるほど、その糸は細いということになります。
 
 
これら番手に対して、デニールは定義が異なります。
“9000m”  の長さのフィラメント糸が ‘1g’ のときに 1デニールであり、
“9000m ” の長さのフィラメント糸が ‘2g’ のときに 2デニールとなります。
標準となる糸の長さの “9000m” に対して、
その糸の重さが基準の ‘1g ’ の何倍か?ということで何デニールになるかが決まります。
この場合、番手とは逆にそのデニールの値が大きくなればなるほど、その糸は太いということになります。
 
 
 
とここまでは前置きで、
今回は、繊維のなかでも毛について考えてみたいと思います。
 
毛の生地をみるとき、例えばスーツ地などを見る際、
その生地の番手以外にも スーパー100’s などと表記されているものがあります。
 
これはこの表記、番手ではない別の s(セカント)という単位です。
これは、番手が糸の太さをあらわす単位なのに対して、繊維そのものの太さをあらわす単位です。
スーパー100’s というのは、繊維の直径が平均 18.5μm(マイクロメートル) であることをあらわしています。(μm=1/1000mm)
この値が 10 増えるごとに、0.5μm  繊維の直径が細くなります。
 
スーパー110’s のとき 18.0μm
スーパー120’s       17.5μm
    •
    •
    •
スーパー200’s       13.5μm
 
というようになります。
 
このセカントという単位は羊毛だけに用いられるものみたいです。
ちなみに、他の動物繊維にも当てはめてみると、
カシミヤで スーパー170’s  15.0μm前後 細いもので スーパー200’s  13.5μm くらい。
もっとも細いといわれるビクーニャやパシュミナは スーパー230’s  13.0μm くらい、もっと細いものもあるようです。
もちろんこの値より太いものも細いものもあります。羊毛でもスーパー230’s 以上細いものもあるらしいです。
過酷な環境で育った獣毛ほど細くなったりするといわれます。
高山で、朝夜の寒暖の差が厳しいところで暮らすために、それに対応して保温性のある上質な毛がつくられるみたいに。
 
羊毛でつくられた、布地をあらわす表現としては、
この生地はスーパー120’sであるだけではなく、
スーパー120’s の繊維で作られた 80番手 の糸を使用して織られている、というようになります。
使っている繊維が細いからといって、細番手の糸を使っているとは限らないということも言えますし、
その逆に細番手の糸を使っているからといって、繊維が細いとも限らないと言えます。
(細番手の糸は、細い繊維を使用しないとつくれないとは思いますが。)
スーパー100’sだけしか表示されていない場合はどのような番手の糸を使っているかは分からないということになります。
 
 
単位について記してきましたが、実際どのくらいの太さなのかは、数字だけみてもいまいち実感がわきません。
番手、デニール、セカントと単位がいくつかあり分かりにくいです。
綿、毛、麻、絹など単位がばらばらで、このままだと比べようがありません。
 
そこで、もう少し分かりやすいように各単位の関係を考えてみます。
次回に続きます

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One Response to 番手とスーパー

  1. textile × design notes » 番手とスーパー2

    […] 糸の太さの単位について、前回の続きです。   番手、デニール、セカント(μm  1/1000mm) の関係がどのようになっているか考えます。 […]

    22 5月 2011 - Reply

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